せっつ・はりま歴史さんぽ|山陽沿線歴史部

阿波池田をめぐる(前編)

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寒さが一段と厳しいこの頃、いかがお過ごしでしょうか。
こんにちは、山陽沿線歴史部の内膳正です。

神戸三宮バスターミナル

今回訪れたのは三宮にある神姫バス神戸三宮バスターミナル
四国・中国方面の長距離路線から短距離まで、数多くの高速バスが発着するターミナルです。
ここから乗車するのが山陽バス昼間高速バス三宮~阿波池田線です。

阿波池田バスターミナル

山陽バスの新しい車両で快適だったのですが、阿波池田までは3時間ほど…。少し疲れた頃に阿波池田バスターミナルに到着しました。
阿波池田は徳島県の最西端、三好市にあります。かつては池田町と呼ばれていたのですが、平成18(2006)年に周辺の町村と合併し、人口2万7千人を数える市となりました。

卯建のある造り酒屋

バスターミナルの近くを歩くと、さっそく、趣のある建物を見つけました。
こちらは「三芳菊酒造」という造り酒屋の店舗です。建物の両側に設けられた衝立のような設備は「卯建(うだつ)」と呼ばれるもので、火災の延焼を防ぐための防火壁として設けられたものです。ただし、防火設備としての役割に重きが置かれたのは江戸時代の初め頃までで、江戸時代の中頃には商家の財力を示す装飾的な役割を果たすようになりました。ちなみに、慣用句の「うだつの上がらない」は卯建を設けるほどの財力がないことを語源としているとされています。卯建の街並みといえば、先ほど、高速バスで通りかかった美馬市の脇町地区が有名ですが、阿波池田の街並みも十分に見応えがあります。

阿波池田たばこ資料館

さらに街中を歩いていくと、古い建物が建ち並ぶエリアに差し掛かりました。この辺りが阿波池田の旧市街地に当たるエリアです。その中の一軒「うだつの家」の看板を掲げているのが「阿波池田たばこ資料館」です。ここは卯建の家の内部を使って、かつて阿波池田で生産されていた煙草の製造過程を紹介する資料館です。楽しみにしていたのですが、なんと、訪問時は休館日。仕方ないので、街並みを眺めて過ごすことにしました。

徳島県西部の山間部は古くから農林業が盛んな地域ですが、江戸時代以降の商品経済の広がりとともに、「阿波葉」と呼ばれる煙草の栽培が盛んにおこなわれるようになりました。煙草生産の中心となったのがここ阿波池田で、多くの加工・販売業者が集まっていました。阿波池田の煙草は品質が良いとして、上方を中心に人気があったと言われています。先述の卯建を上げたのも、多くは煙草で財を成した商家だったそうです。
明治の専売制度の後も発展を続け、大正期に生産のピークを迎えたとされています。この「阿波池田たばこ資料館」も当時の商家の建物を利用したものです。

バスターミナルの片隅に

先ほどのバスターミナルの片隅には、こんな石碑がありました。
このバスターミナルのある場所には、かつて、日本専売公社(のちの日本たばこ産業)の池田工場があり、阿波の煙草産業の象徴的な存在でした。この工場の立地によって阿波池田の街は大いに発展したと言われています。
しかし、時代の変化とともに平成15(2003)年に工場は閉鎖。程なくして阿波の煙草の生産も終了してしまいました。現在は、先ほどの街並みに煙草産業が栄えた当時を偲ぶばかりです。

古くから徳島県西部の中心として栄えた阿波池田は他にも見どころがたくさんあります。
次回、引き続き、阿波池田の街を歩いてみたいと思います。

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