せっつ・はりま歴史さんぽ|山陽沿線歴史部

王子を歩いて(後編)

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こんにちは、山陽沿線歴史部の内膳正です。
前回に続いて王子地区を歩いてみたいと思います。

神戸文学館

王子神社から歩くと、レンガ造りの建物が見えてきました。こちらは神戸文学館の建物です。もともとはここ原田の森にキャンパスを設けていた関西学院のチャペルとして明治37(1905)年に建てられた建物です。関西学院のキャンパスが西宮の上ヶ原に移転した後もこの地に残されています。戦災で大きく損壊しましたが、王子公園で開催された日本貿易産業博覧会の際に修復され、現在は神戸にゆかりのある作家の作品を紹介する資料館として使われています。美しい外観で、王子地区のシンボルのような建物ですが、電線や樹木であまりきれいに写真を撮ることができないのが残念です。

上筒井駅跡

神戸文学館からさらに歩いていくと、真新しい建物と緑地のある一角がありました。前回、王子公園駅で謎の線路を見かけたと思いますが、その線路はもともとこの場所に続いていました。阪急電鉄の前身となる阪神急行電気鉄道が十三から神戸までの神戸線を開業させたのは大正9(1920)年のこと。しかし、神戸市や沿線住民と交渉が難航したことから、神戸市街中心への直接の乗り入れはできず、市電が乗り入れていたここ上筒井神戸駅を開設しました。

上筒井駅跡の景色

緑地からは遠くに神戸の港を望むことができました。
上筒井に神戸駅ができてから16年後の昭和11(1936)年、神戸市街へ乗り入れる高架が開通し、新しい神戸駅(現在の阪急神戸三宮駅)が開設されたことで、もとの神戸駅は上筒井駅となりました。上筒井線と呼ばれる支線になったこの路線は小さな電車が行き来するのみとなりましたが、利用が少なく、4年後に廃止されてしまいます。線路の跡は住宅などが建ち並び痕跡は残されていません。

筒井八幡神社
上筒井駅跡の近くに立派な神社がありました。こちらは筒井八幡神社です。平安時代の創建と伝わる古い神社で、境内は広く趣があります。

筒の井

境内に「つゝの井」という石碑の立つ井戸がありました。この井戸自体は残されていますが、昭和に入りトンネル工事などの影響で水は枯れてしまったとのこと。駅名にもなった「筒井」という地名はこの井戸に由来しています。かつてこの地は湧き水を利用した畑作が盛んな地域だったそうですが、阪急の駅ができるなどで開発が進み、かつての面影はありません。「筒井町」「上筒井通」といった地名が、この地が水とともにあった地域であることを今に伝えています。

神戸市民の憩いの場となっている王子地区ですが、歴史を物語るものがひっそりと隠れています。夏休みのお出かけにはいつもと違ったスポットを訪ねてみませんか。

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